蘭 香津美(あららぎ かずみ)/ Kazumi Araragi長野県飯田市出身。愛知教育大学大学院平面造形修了。特別支援学校美術教諭を経て、現在放課後等デイサービス美術講師。細密画家及びイラストレーターとして日本、インドネシア、台湾にて活躍中。原点は”幼馴染”と”ロック”絵を始めたきっかけを教えてくださいまず幼少期にとても集中力の強い子どもだったことがありますかね。一つのおもちゃで飽きもせず一日中一人遊びしているような性格で、手が全然かからなかったと母親はよく言っていました。その後、自宅の隣に住んでいた伊藤君という幼なじみが、粘土細工や絵がべらぼうに上手な友人で、自分もあんな風になりたいというライバル心のようなものが芽生えたのがきっけですね。今の自分があるのは彼のおかげだと今も感謝しています。小学生時代のお写真 左)蘭さん、右)伊藤くん中学の時は、親の転勤の関係で三重県の津に住んでいたのですが、地元の中学校ではなく某国立大学の附属中学校に通っていました。三重県各地から生徒が集まってきていてユニークな学校でしたが、そこで自分は洋楽好きのロック仲間数名と意気投合してプログレ大好き少年でした。高校の時は美術部に在籍することになったので、超プログレおたくの美術野郎が形成されたわけですね。当時はまだレコードの時代でしたから30センチの大きさで展開されるレコードジャケットというのはイメージの源泉でした。イギリスの古楽の曲(ジョン・ダウランド)を練習する高校生の蘭さんイエスにおけるロジャー・ディーンやピンク・フロイドにおけるヒプノシスなどはものの見事に音楽とリンクしていましたからね。なかでも最も衝撃だったのはサンタナのロータスの伝説(LP3枚組)における22面ジャケットを手掛けたイラストレーターの横尾忠則でした。何しろ、これを見たジャズ界の帝王マイルス・デイビスがジャケットデザインを思わず依頼したというくらいのものでしたし。HACHACKK TAGさんでの正方形サイズの展示は、レコードジャケットに通じるものがあり、親しみを感じています。レコードジャケットを壁に飾って楽しんでいたように、作品を付け替えている感覚ですね。アーティスト名に込めた思い蘭香津美(あららぎかずみ)という珍しいアーティスト名の由来を教えてくださいまず蘭(あららぎ)は出身地の長野県飯田市の近くにある蘭という地名からつけました。あららぎというのは、正一位という日本の位階制度のトップの人が持つ笏(しゃく)を作るときに使われたイチイの木の別名です。字の持つ優雅さとトップになるという意味が気に入って名付けました。香津美は先ほどの伊藤君のお姉さんで、いつもよく遊んでくれた一美さんの名前です。そのままだとあんまりなので大学卒業当時に大ファンであったジャズギタリストの渡辺香津美さんの字をもらいました。名前と作風から女性作家だと思われることも多いですが、それはそれで面白いかなとは思っています。アーティスト名の由来についてお伺い中!病弱教育から感じた使命美術系の大学を卒業されたのでしょうか?卒業したのが教育学部の美術科でしたので美術系ではありますが芸大とは別物ですね。卒業してからは長年特別支援学校の教員をしていました。中でも長かったのが病弱教育です。病弱教育というのは病気で病院に入院加療している児童生徒のために院内学級を担当したり、訪問学級を担当したりするものです。病院には慢性疾患で入院している子どももいるので、闘病の末に亡くなってしまうことに直面することも多く、人生とは何かと考えさせられることばかりでした。この時のことはNHKのテレビドラマのモデルとして使われたこともあったのですが、あの子たちのやりたかった思いを引き継いでいくことが自分の使命なんだろうなあという思いで現在に至っています。自分ができるだけ長生きして、好きなことを継続していくのが一番かなってね。今は教員は退職していますが、子ども造形教室や学童の活動などで子どもたちを指導しながら自分の制作に励んでいる感じです。蘭さんがアート講師を務める教室での子供の作品新たな制作手法への挑戦長年のアート活動の中で制作スタイルの変化はありましたか?簡単に言えばアナログからデジタルへの移行ですね。大学時代にやっていた銅版画及び大学卒業後にオリジナルで開発した鉛筆画がアナログでの制作になります。銅版画は紙に直接描くものじゃないので、刷ってみて初めて結果が分かるというのが面白いですね。刷るたびに微妙に変化するのもいい感じです。鉛筆画は雁皮という和紙にドイツのスタビロ社のMicro8000という特定の鉛筆で描くという超マニアックな世界です。最終的にBFKという水彩紙で裏打ちするのですが、描写の修正がきかないとか、貼り付けのミスも許されないなど、集中力オンパレードな世界なので大変な手間がかかる制作工程なんです。当時の鉛筆画制作風景!デジタル作品のきっかけとなったのはiPad ProとApple Pencilの登場です。これで自分のイメージ通りの世界観が創作できると思いました。それぞれ作成したパーツをコラージュ的に組み合わせていく自分の作風にぴったりのディバイスかなと思います。アナログ作品にもデジタル作品にも良さがあるデジタルを始められた時、アナログ作品へのこだわりなどはなかったですか?日本って日本人の特性かもしれませんが、オリジナルにこだわる傾向があるなと思っています。 しかし私は一点ものであることにはあまりこだわっていないですね。レコードジャケットの美意識が私の作品制作の原点だし、大学時代は銅版画をやっていたのでね。複数制作というのは当たり前の観念でした。もちろん原画の感動は大切であると思いますが、だからといってデジタルや印刷では感動しないってことじゃないと思います。有名な絵画作品でも実際に本物を見たという人は圧倒的に少なくて、多くの人は印刷などのコピーを通して作品を認識しているわけですからね。「夜闇幻猫」などデジタルならではの色使いが見られる作品も多数!絵画じゃないですがインドのタージマハルを現地で初めて見たときに思わず写真と一緒だと叫びそうになりましたよ。元々、写真でもすごいと思っていましたが、本物を見て感動を再確認という感じですよね。作品が名古屋鉄道瀬戸線の記念乗車券にHACKK TAGとの出会いはどのようなきっかけだったのでしょう?Instagramの広告でMEITETSU ART CONTESTをたまたま見かけて、地元名古屋市での企画だし、デジタルで展示するというのが初めてでしたがデータを送るだけでしたので気楽な気持ちで応募しました。応募してみると選考作品に選ばれ、人気投票の結果上位8作品ということで瀬戸線の車両側面の窓に展示するアートステッカーと記念乗車券に採用されてとてもラッキーでした。ということでそれ以降Meitetsu Art Galleryには毎回配信作品として選考してもらっているので感謝しています。名鉄瀬戸線アートコンテストにて受賞した「Elegy for Innocence」 次のチャレンジは”海外展開”今後取り組んでみたいことはありますか海外展開ですね。 HACKK TAGの企画で台湾の高雄で試験的展示がありましたが、私にとって高雄は大好きな場所で友達もたくさんいるので定期的に展開できるといいですよね。高雄には港の近くに芸術特区という場所があり、倉庫を改装したアトリエとかオブジェとかたくさんある素敵な場所です。そういった場所でも展示ができると嬉しいですね。HACKK TAGのトライアル企画でフィリピンのセブンイレブン約300店舗で配信中の「色は匂えど散りぬるを」迷ったら一歩踏み出してこれから挑戦する人へのメッセージをお願いします。HACKK TAGの企画は参加のハードルが低いので、初めて展示する人には魅力的なサービスだなと思います。私自身も面白そうだな、と思って応募してみたことがスタートでした。迷っているなら一回やってみるのがいいと思います。最後にパシャリ!蘭さん、ご多忙の中お時間いただきましてありがとうございました!!