アーティスト「PAMPER PARTY 野村朋世」さんは、水彩画家として水彩のにじみや線のゆらぎを活かしながら、人の感情や内面に寄り添う作品を描いています。小さなきっかけから始まった絵の道は、今では国内外へ広がる活動へと発展。作品を通して生まれる“対話”や“循環”を大切にするそのスタイルは、多くの人に「表現することの自由と楽しさ」を思い出させてくれます。今回は、野村さんの創作に至るまでの道のりや、作品に込める想い、そしてHACKK TAGを通じて広がった活動の可能性について伺いました。PAMPER PARTY 野村朋世線描画家、水彩画家1984年生まれ「自分の総てに祝福を」をコンセプトに頭に浮かぶ映像と湧き上がる愛情を線画と水彩で描かれています。壮絶な体験から生きる意欲を失い、膨らみ続ける自己嫌悪に苦しみながらもさまざまな出会いをきっかけに「私には描きたいものがある」と生きる意欲を取り戻し2019年アーティストになることを決意されました。絵を描くきっかけ絵を始めたきっかけなどありましたか絵を描き始めたのは、実は小さい頃からじゃないんです。本格的に始めたのは2012年ごろですね。環境の変化があって、引っ越しが増えるのでこれからの仕事どうしていこうかなと考えていた時に、自分でできる仕事ができたらいいなと考えました。その時に、昔絵が上手って言われてたなって思い出したんです。そこからイラストレーターになろう!って思って、20枚くらい絵をかいて名刺も作って近所の喫茶店とかに飛び込み営業したんですよ、『500円でなんでも描きます!』って。その時住んでいた岩手の方々がみんな優しくて、仕事をわざわざ作ってくれたり、次々人を紹介して下さって、それで100軒くらい回った時にそろそろ本格的に「イラストレーター」と言っていいタイミングかなと思って、ポートフォリオを作って活動を始めました。アーティストになる!イラストレーターをやりながらアート活動もはじめたのでしょうか?イラストレーターとしてお仕事をいただけるようになって本当にありがたかったし、クライアントの要望に応えたテイストのイラストが描ける事が強みだと思っていました。ただ、やればやるほどなんだか苦しくなってきてしまって、感謝しているし楽しいのにおかしいな?と思っていた時に、たまたま友人の描いている絵を見せてもらって、それが私がもともと大好きだったモチーフばかりで驚いたんです。あれ?今の私はこのモチーフ全然描いてないじゃん!って気づかされた瞬間でした。私は“何でも描ける”のではなく、“描きたいものがあったんだ”って。そこからアーティストになる!って決めたんです。私はPAMPER PARTYアーティスト名はその時に付けられたのでしょうか?2016年頃に『Pamper party』という言葉をネット記事で見つけて、ヨーロッパ圏で自分にご褒美をあげる時間や行為のことをそう呼ぶって知ったんです。もともと友人・知人から相談を受ける機会が多くて、誰に対してもいつも私が伝えたかったことって全部「もっと自分を甘やかして大事にして」っていうメッセージだったんですよ。もう私にピッタリじゃん!ってなって『Pamper party』をアーティスト名に掲げて活動することにしました。その後、ひょんなご縁でオープンしたばかりの埼玉のお花屋さんで個展を開けることになりました。植物園のような空間に、植物と植物の線画を展示したらそれがすごくしっくりきて。県外の友人や初めましての方にたくさんご来場頂き、オーナーさんや地元の方々から多大なご協力を頂戴して、お祭りのような楽しい時間でした。アーティストとして活動する中での変化などありましたか?私は器用なタイプではなくて、色々やろうとすると全部ぐちゃぐちゃになっちゃうので、まずは自分の「描きたいモノ」に専念しよう!と気持ちを切り替えたのが2019年くらいですね。切り替えたタイミングから不思議と私の意向を後押ししてくれるようなご縁が生まれるようになって、作品を欲しいと言ってくれる人が現れたり、私の才能を賞賛してくれる人が現れたり、自分では気付いていなかった強みを知る機会が増えました。スムーズに事が運ぶというか、昔からの友人知人も喜んでくれるし、理解して応援してくれる人ばかりで、周りに支えられて自分が好きなことに集中できている感覚がありました。1人で全部やらなくて良いんだ応援団の存在も大きいですよね個展やりたいな、見てほしいなって気持ちが湧いてきた時、知人から個展のお声がけをいただいたんです。なるべくたくさんの原画作品をみてほしい!楽しんでもらいたい!と思ったんですが、やりたいことの最小限でも資金がすごく必要になって、手元の貯金だけじゃ全然足りなかったんです。そしたら、まわりの友人たちが、応援サイトを作ってくれて、資金を集めてくれたんです。海外から来場される方のことも考えて、作品を持ち帰りやすいようにっていう配慮も含めて、冊子を作ることになりました。プロの脚本家の方がインタビューしてくれて、全作品に言葉をつけて、日本語と英語のバイリンガル冊子を制作したんです、その流れで作品集も作ることができました。 さらに個展の準備はスタッフがサポートしてくれて、私は1人で全部やろうと頑張らなくてもよかったんだなって実感できました。気持ちの持ち方も変わって準備も全力でやったら、会場の立地の良さもあって、4日間で300名近い方にご来場頂けて!県外の友人も大勢駆け付けてくれたり、もう嬉しくて、驚きの連続でした。道ゆく人がふらっと入ってきて、これめっちゃ好き!って目をキラキラさせて見てくれて。その表情を見た瞬間、“この人、私の作品に恋してくれたんだ”って心がときめく体験も何度もあって。会場でその場で買ってくれた方、購入の連絡をくれた方、みんな慈しむように作品を受け取ってくれて。"ああ、私は描いていてもいいんだ"って、心から思えた瞬間でした。華やかな経歴もなく独学の私の作品を欲しいと思ってくれる人がいるのか、なかなか自信を持つことができず不安に思ったり、日々葛藤の繰り返しですが、その個展を経て、こんなにも多くの人が応援して支えてくれているのだと目の当たりにでき、自分の存在や表現を肯定できるように成れたし、奇跡のようなことがたくさん起こった感動的な挑戦になりました。HACKK TAGを知ったきっかけHACKK TAGのことはどこで知っていただきましたか?作品をスキャンしてくれる業者を探していた時に、たまたまHACKK TAGを知ってあまり深く考えずに登録しました(笑)スキャンデータのおかげで素敵な冊子や作品集も出来上がりました。ちょうど募集していたデニムアートの企画に選ばれたのも自信を頂きました。フォロワーの方たちも盛り上がって応援してくれて、本当に支えられているなと感じましたね。それまでアート活動をされている方と会ったことが無かったので、わくわくと不安で緊張していたのですが、現地で他の出展者たちと会ってみて、みんな素敵ですごく自然体で、めちゃくちゃかっこよくて。“これがアーティストなんだ、私も彼らのような存在なんだ!“って嬉しく思えた瞬間でした。その後フォロワーさんにみんなの魅力を伝えたくて、インスタライブでコラボ配信をお願いしてお互いのファンにお互いの魅力を伝えることができたり、個展や海外遠征をしたり、HACKK TAGで繋がったご縁で活動が広がりました。HACKK TAGを利用しているアーティストは、自由に楽しんで描いている人が多い印象ですね。才能も違えば視点も違って、拡張のキッカケを得られるし、利用の仕方の調整は自分で決められるし、すごく自由なコミュニティだなと感じています。デジタル展示で感じたことデジタル展示について感想を教えてください私は命が宿った作品は“発光”するなと感じているんですが、(物理的に)視覚として発光を共有できるのが嬉しいなと。そしてアナログで制作している自分の作品がデジタルでの表現にもとてもマッチしていると気付けたのは新たな発見でした。いつも何ミリの世界の中でこだわって制作していた作品が、大きなパネルでも作品のクオリティが保てていると感じたのはすごく自信になりましたね。私めちゃくちゃいい絵描くやん!って(笑)KYOTO STATION GALLERYにてデジタル展示作品に対する思い作品の制作で意識されていることは何かありますか?"余白"を作る事は意識しています。私の作品を見た人が、それぞれの視点で受け取ってほしいから。作品を見たドイツの方が『余白が饒舌に語っているわ』って言ってくれたんです。何も描かないことで、かえって語れることがある。作品を通して自分を感じる体験をして、楽しんで欲しいんですよね。それに触れて私もまた味わう豊かさがある。言葉になっていなかった感覚が言語化という新たな形を生み出したと確信できた体験でしたね。作品って、今の自分を俯瞰で見れる。その時の感情、その時の思考、その時の身体じゃないと、もう二度と描けない。道具の選び方とか、描き方とか、基本的なことは分かっても、"こう描いたらこうなるよ"って再現する事にあまり意味を見出していないかもしれないです。だから、最初に描いてた頃なんて、油彩キャンバスにアクリル絵の具と水彩と鉛筆を混ぜて、めちゃくちゃ難しかった(笑)それすらも今しか描けないという貴重なプロセスだったから、全部大事なんですよね。 私の作品は誰かのところに行ったあとも、育っていくんですよ。その人の生活の中で変化していくし、その人の気分や状態で見え方も変わってくる。私自身も、作品を描いてる最中は描くことだけに集中してるけど、それが誰かの手元に渡った瞬間、作品と一緒に歩んでいくって感覚になるし、自分自身の拡張を感じる。これが、もうたまらなく嬉しいんです。作品を見つめる野村さん今後のビジョン今後のビジョンとして考えていることはありますか?やっぱり作品の力で海外へ行きたいっていうのがあります。今この瞬間にも、世界中で私の知らないときめきが待っているって思うと、わくわくするんです(笑)自分の作品が世界のどこかの誰かのもとへ届いて、そこから"対話"が始まる。絵を通じて、心を震わすやり取りができる。あの個展のときに確かにできたっていう手応えがあるから、それをもっと重ねて広げていきたいんです。私にとって作品って、完成ではなくて「循環」するものなんです。自分も見る人も変わっていって、価値観も視点もどんどん移ろっていく。だから作品も見るたびに違って見えるし、意味も変わっていく。描いて終わりじゃなくて、"見る人と一緒に育っていく"存在。だから、私の作品には余白や委ねがある。そこに見る人の気持ちや経験が入ることで、新たに生まれるんです。だからその循環の中で変化する事に柔軟でありたい。もしかしたら、明日から埋め尽くす事を大切にするかもしれないし(笑)最近では、インタビューを受けたり、冊子のためにステートメントを書いたりする中で、言葉が自分の中で重要度を増してきました。言葉、作品、そして私自身、どれかが主ではなく、互いに補完しあってる感覚です。だから、作品だけだとこぼれ落ちている側面も当然あるし、逆に言葉だけでもすくいきれない面がある。それらが並ぶことで、"あ、これはこういう世界観だったんだ"って咀嚼しやすくする為の私からのギフトに成り得るなと。ご自身の作品集最後にこの記事をご覧になるアーティストの方へメッセージをお願いします自分の感性を疑わないでほしい。誰かと比べたり焦らなくていい。自分と対話して、自分が大切にしているものを知っていく。そうして生まれた表現には、きっと誰かの心に届く何かの力がある。それを信じて、今日もまた、自分を信じて描いていきたいと思っています。今これを見ててHACKK TAGに登録してみようかなって思ってる人がいたら、まず気楽に"種まき"の1つぐらいの気持ちでやってみてって伝えたいです。私も最初は何も分からずノリで登録しました(笑)事務手続きが苦手で先延ばしにしがちですが、LINEで気軽に相談できるので、苦手なことへの心のハードルが下がったかなと。おもしろい企画も多いし、自分では思いつかなかったようなご縁や挑戦が生まれました。どこかで繋がってお互いのクリエイティブを刺激し合えたら嬉しいです。自分の総てに祝福を!ハイチーズ!パシャリ