「soshare digital GALLERY」の共同運営パートナーであり、「100人のARTノートプロジェクト」を運営するONARTメンバーでもある特定非営利活動法人soshareの東村奈保さんにお話しを聞いてみました。NPO 法人ソーシェア 代表理事 / ikiri 株式会社 代表取締役神戸生まれ神戸育ち。「シェアで社会問題を解決する」をテーマに2013年にNPO法人ソーシェアを設立し、シェアハウスやシェアキッチンなど多様な“シェア”型事業を展開。2021年、美術家・長坂真護の専属ギャラリー「MAGO GALLERY YOKOHAMA」を横浜に開設。2023年にはパークホテル東京に「soshareギャラリー」をオープン。アートを軸にしたプロジェクトを次々と立ち上げ、国内外で展開中。仕組みづくりを得意とする“事業の立ち上げ屋”。法人設立5件、店舗立ち上げ10件以上。アートとの”馴れ初め”はじめに経歴を教えてください2013年にsoshareを立ち上げたんですが、soshare(ソーシェア)はsocial×shareという意味で、奪いあうことではなく共有することで社会問題が解決できたらという思いから名付けました。シェアハウス、シェアスペース、シェアキッチンの運営をしながら、様々な”シェア”の形を追求していました。その中で商店街を盛り上げる企画の提案依頼があったことで、「シェア×アート」はどうだろうと思ったことがアートに関わるきっかけですね。提案したのは、1つの店舗を複数のアーティストでシェアしながら運営していく、というアイデアでした。2014年、神戸市の空き店舗活性化事業の採択を受け、元町商店街でクリエイターのための展示販売スペース『TuKuRu(ツクル)』を企画・運営アートからじゃないんですね!そうなんです(笑)提案はしたもののアーティストの知り合いもいなかったので、アートフェアなどに足を運んで声をかけることから始めましたね。最終的に画家やクリエイターなど様々なジャンルのアーティストが50名程集まったんですが、物販だけの運営は厳しかったので、入口・フロア・庭先・2階と、空いてる時間と場所を常にシェアできる状態にしていました。アートがきっかけではあったんですが、自分がアートという分野に携わってこなかったからこそできたことも沢山あったなと感じます。シェアは”好き”の繋がりなぜ”シェア”だったんですか?離婚後のことですが、はじめて一人暮らしを体験した時に、コンビニでお惣菜を買っているおじいさんを見たら「日本はこんなに豊かなのに、ひとりでご飯を食べるお年寄りがいるのか」と思ったら泣けてきて。その時の精神状態も影響してるとは思いますが・・みんなで住んだら一緒に食事をする仲間ができるのではと思ってシェアハウスを考えていて、当時、東京にはコンセプト型のシェアハウスが出始めた頃だったのでお年寄り向けのシェアハウスはどうかなと思ってヒアリングしたんですけど、撃沈しました(笑)お年寄りばっかりなら入りたくないって言われてしまって。それって老人ホームですよね(笑)そうそう(笑)「お年寄り」ってコンセプトになると思ったんですが、コンセプトって好きなもの・好きなことで繋がるものであって、助け合えないとダメなんだなって。一緒に住むことで助け合える同士じゃないとシェアハウスである意味がなかったですね。soshareが最初に取り組んだコンセプト型シェアハウスの様子「アートの時代」が始まる感覚東村さんにとってアートとは最初にお話ししたアーティストと運営する店舗が神戸元町商店街6丁目という場所にあったので、神戸のある百貨店からアーティストを紹介して欲しいと言われて、そこからどんどんアートに関する仕事の割合が増えていったんです。今は”百貨店でアートを買う”のは当たり前になったと思うんですが、その時は百貨店がアーティストとの繋がりを探していて、展示から売上の取りまとめまでハブのような役割をしていました。アートに関わるにつれて「私って全然アート知らない。。」と感じていたんですが、資格や理論ではなく、役割としてのキュレーターをやっていこうと思うようになりました。美術を勉強してきた人とは違った目線でアーティストと話しができることが強みでもあるので、私らしい新しい提案ができているなと思っています。自分が好きだと思うものを好きな形で実現したいというか。100人のARTノートも、100種類あればきっと「好き」が見つかるはず、というコンセプトがもとになってますね。構図がいいからこの絵を好きになりなさい、というのは難しい話だと思うんですよ。その絵が素晴らしい(評価されている)かどうか、と、その絵が好き、は全然違うので。説明が伝わりやすいのでキュレーターを名乗ってはいますが、自分ではキュレーターよりもアートプロデューサーだと思ってます。アートを「選ぶ」というよりは、アートを使って「場をつくる」ことや、「新しい展開を生み出す」ことをしていると感じています。【第3回100人のARTノート】100種類のアートから、お気に入りの一冊をMAGO GALLERYを立ち上げられたんですよね?アートの仕事が増えていくなかで色々とお声がけいただくことも多くなり、その中で神奈川県のリサイクル会社から長坂真護さんの支援をしたいとのお話があって、ギャラリーの立ち上げをお手伝いしたんです。立ち上げだけだと思っていたんですが運営メンバーがいないね、となって、私に白羽の矢が立ったというか(笑)このギャラリー運営のために神戸から横浜に引っ越すことになって、アート一本でやっていくことになりましたね。長坂真護さんは先進国が投棄した廃棄物からアートを作るアーティストなんですが、ゴミとして捨てられたものが数百万円の価値のあるものに変わっていくのを見て、アートの面白さを改めて感じていました。MAGO GALLERY YOKOHAMAアートをシェアするホテルとの出会いパークホテル東京との繋がりはどこで生まれたんでしょうかあるプロジェクトでパークホテル東京の存在を知り、”ホテルという場所を使ってアートをシェアする”モデルに衝撃を受けましたね、自分に通じるものがある!って。最初に長坂真護さんの企画展を実施したのをきっかけに、26階にあるギャラリー運営を任せてもらえるようになり、そのタイミングで長坂真護さんの作品だけじゃなく、自分でもキュレーションするようになりました。 パークホテル東京26階 コリドーギャラリー 26100人のARTノート企画ONART*1 が発足したのもこの時期ですか?そうですね、事業がアートだけになったので模索していた時期だったと思います。ONARTにもシェアの考え方を取り入れていますよ!100人のアーティストが集まれば、100人にファンがいて、発信力も増えますよね。一人でできないことは数を集めて活動をシェアするんです!*1 アーティストの応援文化をつくる「株式会社 IDEABLE WORKS」、地域社会でアートシーンに新たな価値を提供する「きたすずランド株式会社」、アートで世の中を少し良くする仕組みをつくる「特定非営利活動法人soshare」の3社で立ち上げたチームONART の企画 100人のARTノートと原画展@阪急うめだ本店デジタル展示はじめましたHACKK TAGとデジタルギャラリーを運営してみ感じたことがあれば教えてくださいギャラリーも運営しているので原画主義ではあるんですが(笑)、原画の取り扱いの大変さも当然知っていて、「アートをより身近なものにする」ことを考えたときにデジタル展示はひとつの手段だなと思いました。アートに興味がなかった人にも新しい接点が作れるんじゃないかなと思ったんですよね。寺本さんとはアート出身じゃない繋がりで、同じような考えを持ってるなと思ったのもありますね。とりあえずやってみよっか、的な。soshare digital GALLERY 展示の様子余計に動くことの大切さ気づいたら旅行しているイメージなんですが、自由に生きてますよね(笑)自分だけでは生み出せないものも、誰かからの問いかけ(依頼)があることで生まれることってありますよね。問いかけられたからには絶対に自分なりの答えを出したいし、そうして応え続けることで新しく出会う人も増えていく。結果的に、また新たな問いかけが生まれていく──そんな循環があるんです。旅行も好きで、途中下車もよくしますよ。普段と違うことをやるからこそ新しい出会いがあるし、せっかく動いたからには何か持ち帰りたいじゃないですか。東村さん(左)とIDEABLE WORKS寺本(右)東村さんなりのこだわりなどあれば教えてくださいシェアハウスもシェアキッチンも「誰かを喜ばせたい」人が想いをもって運営に関わってくれていたのも同じだと思うんです。自分ではできない(アートを生み出す)ことをやってくれる人たちは、個性が強い人が多いなという印象ではあるんですが、”違う感性の魅力的な人”として映っているので、多少コミュニケーションが難しくても全く気にならないんですよ。あと、日本で初めて「シェアキッチン」という概念を作ったのは私だと自負してます!(笑)シェアキッチン「ヒトトバ」最後に今後考えていることなどあれば教えてください表現者をサポートしたいという気持ちは、これからもずっと続いていくと思います。アートの可能性は無限大。だからこそ、「●●×アート」といった新たな掛け合わせを、もっとたくさん生み出していけるはずです。アートを”アートとして”ただ消費するだけじゃなくて、そこに付加価値を加えて、新しい価値を創造していけたら──そんなふうに考えると、すごくワクワクします!3人でパシャリ (東村さんとIDEABLE WORKSメンバー)