今回はフリーランスでデザイン・プログラミングの仕事を奥様とこなす傍ら、AIを活用したアート制作に取り組んでおられるTETSUさんのアーティスト活動を始められた原点に迫り、現在の活動状況をお伺いします。奥様が釣りに興味を持ち結局二人の共通の趣味となって、海の近くに転居されるなど仲睦まじいストーリーにも注目です。TETSUAIアーティスト。CGシステムのエンジニアを経てテクニカルライター兼イラストレーターを本業とし、傍ら「TETSU」としてCG、生成AI、水彩画など技法にこだわらずアート制作に取り組んでいる。デザイン科の同級生ご夫婦二人三脚での作品制作今日はご夫婦でインタビューに参加いただきありがとうございます!奥さまが作品のディレクションを務められているとお伺いしました。そうなんです。普段は私が制作を進め、最終的には妻が作品を客観的な視点で確認し、作品を世に送り出してよいかどうかのGOサインを出してくれています。作品制作に取り組む段階でもどんな作品にすべきかいつもアドバイスをもらっていますし、制作してはアドバイスをもらってさらに制作を重ねてということもあります。実は妻と私は高校のデザイン科で同級生でした。なので、かれこれ50年ぐらい一緒に過ごしています。個人事業として請け負っているデザインやテキストライティングの仕事も妻と一緒なので、常に家で一緒にいるような感じです。素敵な笑顔で迎えて下さったTETSUさんご夫婦とても仲がいいのですね!奥様からはどんな視点でのアドバイスが多いのですか。実は私が心のままに絵を描くと、一般の方には少し取っ付きづらいような・・・どこか空想の世界を具現化したような作品を描きたくなるんです(笑)これはこれで気に入ってもらえる方に届けばいいかなとは思うのですが、せっかく作った作品をより多くの方に受け入れてもらうにはどうすればいいのかという客観的な視点で、いつも作品をチェックしてくれています。具体的には少しポップな要素を取り入れたり、色彩も鮮やかな仕上がりとなるようにアドバイスをもらったりしています。私がアクセルを踏んで、妻がうまい具合にハンドル操作とブレーキをかけてくれているような感じです(笑)それでTETSUさんの作品はカラフルでどこか楽し気な作品が多いのですね!そうなんです。過去の私のインスタグラムの投稿を見ていただけると、明らかに私が何も気にせず自由に描いたであろう作品と妻のディレクションを経て制作されている作品とでは全然違うことが分かってもらえるかなと思います(笑)KITTE大阪特設展「PLAY ART OSAKA」にて最優秀賞KITTE大阪賞を受賞した「The entropy of fun」現実を超えるべし――奥が深い水彩画の難しさ現在はAIアートが中心かと思いますが、元々AIアート以外にも制作をされていたのでしょうか高校時代は少し油彩もやっていましたね。最近では、コロナの時期に妻に誘われて水彩画を始めるようになったのですが、これが難しい・・・・ご縁があって福井良佑先生にご指導いただいているのですが、風景等を模写する際はその現実を超える作品に仕立て上げるようにと言われています。水彩画は上から上書きすることも難しいですし、シンプルなように見えて実に奥が深いなといつも妻と話をしています。左)TETSUさんの作品_モーゼ 右)奥様の作品_キリンCGシステム開発から自然に導かれたAIアートの世界何をきっかけにAIを使うようになったのでしょうか。昔から常に新しい技術やツールにとても興味があり、ChatGPTが登場する前から実はAIを使っていたんです。少し話は遡りますが、デザイン科を卒業した後は30年以上プログラマーとして仕事をしていました。当時はまだCGシステムが世に出回っていない時代で、所属先の同僚とCGシステムのソフトとハードを自分達で製作していました。昔から最先端の技術に興味があったんです。今では考えられないですが、当時はそのシステムが1台1,000万円以上というとんでもない価格でしたが、バブル期だったので良く売れたことを覚えています。インタビュアーの想像を超える話の連続で、お話しに熱が入ってきました!価格のインパクトに引っ張られてしまいましたが、TETSUさんの原点が少し見えてきた気がします。その後、フリーランスで産業装置や家電の取扱説明書の制作に転向しました。元々イラストやデザインは得意でしたし、テクニカルライティングと呼ばれる専門的な内容をより簡潔に表現して文字起こしする経験もあったので。取扱説明書の制作は誰が見ても同じ情報として捉えられるよう設計する必要があります。これが非常に地味な作業でして・・・そのストレスをアート活動で解消しているようなところがあります(笑)アート作品は閲覧者それぞれが自由に解釈して良いので、同じアート・デザイン制作でも取扱説明書の世界とは正反対なのが面白いですね。仕事でも徐々にAIを活用するようになりましたが、あれよあれよという間に技術が進化してChatGPTが登場し、さらにMidjourney(AI画像生成ツール)が登場しました。そのあたりからAIを活用したアート制作にも取り組むようになりましたね。私のChatGPTは私の生活パターンを既に認識しているようで、それを踏まえて返答してくるので驚きです(笑)AI生成と人特有の感覚の融合が織り成すハーモニーAIの利用はTETSUさんにとって自然な流れだったのですね。TETSUさんにとってAIはどのような位置づけなのでしょうかAIは私にとっては”第二の筆”です。感覚的にはまわすとカプセルが出てくる「ガチャガチャのカプセルマシン」みたいな感じですね。ただ、当然当たり外れがあるので、どれを選ぶか、そこから磨きをかけて作品としてどう昇華させるかがまさに作者の腕の見せ所であり、アーティストの責任でもあると思っています。あくまで作品の最終形を決めるのは人間なんですよね。AIには左脳的な理屈や計算的な作業を任せ、最終的な味付けは右脳的な感覚で行っているような感じです。最近のAIは秒単位で進化していくので、その変化に驚きつつもそれが楽しみでもありますね。AIアートに対しては賛否両論ありますが、TETSUさんはどのように捉えておられますか確かにまだまだAIアートはアートじゃないと言われることもありますが、ツールは常に変化するので何を使うかではなく、何を表現するかが大事なんだと思っています。かつてデジタルアートが登場した時も同じようにアートではないと言われていましたが、今では美術館に展示されてるのと同じですね。もちろん、著作権や倫理への配慮は作者が負うべき責任で、ここへの配慮は絶対に欠かせません。私は出典不明な素材には依存せず、必ず透明性を保つようにしています。ジャパン・クリエイターズ2025の表紙を飾る「浮世グラフティ_月」デペイズマンとクオリア──違和感追求した表現のその先に作品を制作される際に意識していることはありますかデペイズマンという意外なものを場違いに配置する手法を意識的に使っています。例えば、伝統的な和文様の中に未来都市の光景を挿し込んだり、古典的な構図にネオンの光をねじ込んだり。違和感と親近感が同時に生まれる瞬間に人は無意識に反応すると思っています。伝統的な浄瑠璃と未来が融合したデペイズマンを体現した作品「ニューラル浄瑠璃」もう一つ、クオリアと呼ばれる感覚質の可視化も大事にしています。クオリアは個々人が感じる何とも言えない感覚を意味しており、例えば月明かりに照らされたときに感じる、冷たいけれどちょっと温かい、矛盾した感覚。この何とも言葉にし難い感情を作品を通じて感じてもらえるよう作品の余白や色、輪郭の調整を通して作品に込めています。少し難しくなってしまいましたが、昔からスピリチュアルな世界や量子力学の世界など目に見えない不思議な世界に興味があるんですよ(笑)量子力学の話になると止まらないTETSUさんと見守る奥様。次回またたっぷりとお伺いさせてください!笑アーティストと社会を繋げるという理念に惹かれHACKK TAGとの出会いについて教えてください作品の発表機会をWebで探していた時に偶然に見つけ、”アーティストと社会を繋げる”という理念に惹かれました。また、デジタル作品やAIアートも受け入れていると知ったのが決め手でした。まだまだ現実としてはAIアートに抵抗感がある場も多いので、HACKK TAGの姿勢はとても心強く感じました。パークホテル東京での展示に始まり、最近は名古屋や京都、大阪での展示にもどんどんチャレンジしています。パークホテル東京には作品の展示を見に行くついでに宿泊もしちゃいました。パークホテル東京にて開催されたMOVE ON~躍動~ART CONTESTでのオーディエンス賞受賞作品「One Step Beyond」ひとりでは届かなかった場所に作品が届く感覚HACKK TAGを利用してみて、どうでしたかHACKK TAGを使って感じるのは、”ひとりでは届かなかった場所に届いた”ということです。単純に作品を発表する機会が広がっただけでなく、審査員の方や展示先施設の担当者の方が自分の作品を見てくれているという感覚があり、社会との新しい接点が生まれました。最近では、作品へのフィードバックコメントをもらえる仕組みも導入されており、制作を進める上での励みになっていますね。アート活動はどうしても孤独になりやすいですが、HACKK TAGを通して繋がりができるのは大きな意味があると思います。名鉄瀬戸線アートコンテストで最優秀作品賞を受賞した作品「静謐な領域」の独占展示展示を通して自分だけでは気づけなかった新しい領域へHACKK TAGの利用を検討されているアーティストさんへメッセージをお願いします展示は”完成した作品を見せる場”というより、”作品が観客と出会って初めて完成する場”だと思います。展示することで、自分では気づけなかった視点や新しい可能性が返ってきます。その往復こそが、アート活動を続ける力になると感じています。迷っているなら、一度やってみて欲しいなと思います。奥様がスイーツなどを投稿しているインスタグラムアカウントの方が活況であることに少し拗ねているTETSUさん(笑)TETSUさんのインスタグラムアカウントはコチラ